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鍔元に見る日本の芸術

工作
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前回の記事男児の夢であるオリジナル武器の作成が始まりました。どうにかこうにか打刀の刀身ができたので、次はそれに装着する刀装具の制作です。まずは切羽の制作です。「刀身の次は鞘じゃないの?柄じゃないの?」と思う方もおられるかもしれませんが、鞘や柄は刀身だけでなく切羽にも接するので、先にこれらを作っておかないと組み立てられません。イメージわきにくいかもしれませんので、鍔元のリアップどアップ写真掲載しておきますね。本記事作成時には打刀の柄や鞘が未完成のため、完成済みの脇差の写真になります。

抜き差しを繰り返したので塗料が禿げてしまいました✨がそこはご容赦くださいませ。笄穴(こうがいあな)が小さいのも見なかったことに…今回の工作部位が何となくわかったところで解説始めまーす!

刀身に付属するパーツの説明

※前回ほどではありませんが、イントロが長く続きます。とっとと作れやという方は、作成方法までジャンプ!

鎺(はばき)

は、日本刀の鍔と刀身の間に見える金色の部品です。刀身とは異なり、金・銀・銅などでつくられているそうです。

本物の日本刀は鋼でできておりますが、水分、鞘の木材に含まれる油分、触れたり斬った人間の皮脂などで錆びてしまいます。なので、使用後に刀身をきれいにするのはもちろんですが、納刀時に鞘が刀身に触れないように鞘の溝は刀身よりも少し大きく彫ってあります。

は、刀身と似た断面形態をしておりますが、サイズは一回り大きいです。これにより、納刀時には鞘は鎺としか接触しない状態になり、刀身の錆が抑制されます。また、鞘と鎺が程よい摩擦力を発揮することにより、意図せずカツラ滑落することが防止されます。さらに、斬撃の際にはクッションの役目も果たすそうです。このように、小さいパーツながら機能面ではかなり重要と言えます。機能面だけでなく、反りにあわせたり装飾を施すなど、刀身やほかの刀装具とのマリアージュも考えなければいけません。鎺を作る職人を白銀師と言います。本来は目貫や鍔など金属製の刀装具全般の制作を担当していたそうですが、作製に高度な専門知識とそれを形にするやはり高度な技術が必要なため、鎺の専門職として独立していったとか。プラスチックの模造刀とはいえ、こんな難しいことが素人にできるんでしょうか💦

左に示すのはあまの作の鎺です。峰側から見下ろした写真です。刀身と同じプラ板を曲げて作りました(方法は後述)。一般的な鎺の形ではありますが、ものによって呑込みが無かったり、台尻側が二重になっていたり(二重鎺)バリエーションがあります。このほか、家紋を彫ったり鑢目が入っているなどのバリエーションもあるようです。

切羽

「切羽詰まる」という慣用句を聞いたことがない人はいないと思います。この元になったのは実は刀装具の切羽です。を挟んで装着される1対の(太刀の場合は3~4対)薄い卵円形~楕円形の板で、中央部に茎を通す穴が開いています。下の写真のような感じですね。鞘や柄の幅よりやや大きいくらいです。目釘を保護し、柄の握り具合を調節し、斬撃の衝撃から手を保護する役割があるそうです。

いくつもの刀装具に挟まれた薄い部品なので消耗しやすいそうです。薄くて消耗しやすいとは、そこの中間管理職のあなたによく似ていますねぇ薄くはない中間管理職のあまのは使い捨てられないように気を付けたいところです。切羽は白銀師銅や真鍮から作りますが、消耗がハゲしい部品ということは白銀師さんたちもその分頑張って作ったんでしょうか?過労には注意していただきたいものです。

なお、冒頭の切羽詰まるですが、切羽がきつすぎて刀が抜けなくなることから転じて余裕がないことを表現するようになったといいますが、「切羽をきつくして抜けなくなる」が理解しがたいです。鎺が歪んで鞘と強く当たるようになるんでしょうか?

は、柄と刀身の間に位置する刀装具で、斬撃の衝撃で握りが滑って手が切れないように保護します。小さいながらもよく見えるパーツで、戦乱の時代を過ぎると見た目も重視されるようになります。現代においては、刀から半ば独立した美術品として扱われることも多いです。鬼滅の刃BLEACHなど、フィクション作品では登場人物のキャラ付けにも使われていますね。それだけ目立つパーツなんです。実際には毛がケガしそうな尖った形のものもあり、一部の登場人物のことをあまのは非常に心配しております。

デザインが様々とはいえ、時代や産地によって、また、刀匠や甲冑師がサイドビジネス?的につくるものや専門職の鍔工師がつくるものなど、作製者によってもある程度はパターンがあるそうです。自作する際に時代考証や設定にこだわらないのであれば、ある程度自由に作ってもいいんじゃないかと思います。あまの作の打刀の鍔「風月図鍔」で鍔の構造について説明します。

鍔の中には刀身の茎が通りますので、そのための茎穴が開いています。切羽が接する部分は切羽台と呼びます。その横にある2個の穴ですが、差し裏(納刀時に体に面する方)のものを小柄穴、反対側のものを笄穴といいます。その名の通り、小柄を鞘の小柄櫃や笄櫃から抜くための穴です。したがってこれらの刀装具を鞘に装着しないのであれば不要です。

実際、これらの穴が片方あるいは両方無いとか、埋めてある鍔もあります。縁の部分はといいます。鍔の模様のつけ方ですが、今回作成した「風月図鍔」のように外形線が貫通するものを透かし鍔と呼びます。貫通させずに凹凸で模様を表現するのは難しいので、自身のない方は透かした方がいいと思います。

各パーツの作成方法

さてさて、構造の基本知識が頭に入ったところで作成に移りたいと思います。

鎺は管状の構造をしております。これを作るには、①ブロック状の材料を切り出すか、②板状の材料を曲げることになります。①については、4cm x 4cm x 4cmくらいのブロックが必要になりますが、ホームセンターやネットで探しても中々見つかりません。したがって、あまのは②を採用しました。使ったのは刀身と同じ6mm厚のプラ板です。これを幅3cm x 長さ10cmくらいに切り出します。切り出しは前の記事の鋸を使いましょう。断端がざらついている場合は紙やすりで磨いてください。

次に、出来上がった短冊状のプラ板を曲げます。曲げたい部分に指を押し当てて念じると、ぐにゃりと曲がりますので、ちょうどいいところで止めましょう。

…本当は熱で曲げます。曲げたいところを焦げない程度に加熱して、軟化したタイミングで一気に屈曲してやります。熱源にはいろいろあります。ネットで調べると、ドライヤーとかヒートガンを使われる方が多いようです。あまのもいくつか試しましたが、直線の屈曲には洋服用のアイロンが便利でした。

左の写真は屈曲中のものです。プラ板の屈曲したい部分に、前回の記事のルーターとドリルビットを用いて深さ2mm程度の溝を彫ります。この溝に熱したアイロンの角を押し当て熱します。加熱時間はアイロンの性能などに依存しますが、抵抗なく曲がるところまで来たら一気に曲げましょう。うまくいくと左の図のようになります(少し焦げてますが💦)。あらかじめ溝を彫っていないと、屈曲部位がコントロールできず、ゆるゆるの鎺になってしまいますので、必ず彫りましょう。棟方で2か所、鎬と刃の間で2か所屈曲します。

冷えるまでの間クリップや万力などで締めて、後戻りを防止します。万力はここ以外でも色々な作用に便利ですので、角度を自由に変えられるタイプのものを使用しましょう。机に固定する必要は特にありません。

長さに余裕を持たせているので、刃に沿わせて屈曲させると途中で断端がぶつかると思います。そうなったら、干渉している部分を棒やすりで削ってやります。干渉しなくなったらさらに屈曲します。鎺と刀身がぴったりになったところで再び万力で締めて固定します。1mm未満の隙間が残りますが、最後に塗料か接着剤で埋めればヨシ!ですのでご安心を。

屈曲が終わった段階ですと、カクカクした形で見栄えがよくないですので、ルーター+ドリルビットやすりなどで形を整えます。刃先に向かうにしたがって薄くなるよう角度もつけてやります。ここまでやると、以下の写真のような形になります。形が整ったら金色のアクリル絵の具で塗装して先述のようなものができます。塗装の際に、ハゲハケで線を引くようにすれば、鑢目を表現できます。また、家紋などを描きたければ、彫ったり塗ったりしてデコりましょう。なお、内側にべっとり塗料を盛ると茎が嵌らなくなりますので、やりすぎに注意しましょう。

切羽

切羽の構造は単純なのであまり説明することはありません。刀身作製に使用したよりも薄いプラ板があればそれを切ってゴールドに着色すればおしまいです。100均のプラ板や透明下敷きを買ってもいいかもしれません。

あまのが作刀した際には、100均でこれらが手に入るということを完全に失念しておりましたので、6mmプラ板を削って1.5mm程度の薄い板を作りました。最初は6mmの板を二分割と考えましたが、薄い板を鋸で半分はかなり難しいです。途中で斜めになって厚みが均一になりませんでした。そこで、6mmの板から4.5mmほど削り飛ばして薄い板を作りました。下図のように溝をつけてやると厚みをコントロールしやすいのでお勧めします。溝が見えなくなるまで全体を削れば均一な厚さにできます。

横の写真撮り忘れてしまいました…このあと、楕円形に周囲を削ってゴールドに塗装すれば切羽の完成です!

もう一枚作るのもお忘れなく!

づくりはデザインの考案に長い時間を要しました。あまのの場合、「○○のレプリカがつくりたい」ではなく、「構造的に現実的かつオリジナルの日本刀を作りたい」という動機で作刀を始めましたので、鍔や目貫のデザイン、柄紐の色などの検討と刀身の作成は同時進行でした。ほかのパーツとちぐはぐになってもいけないので、鍔を作る段階では全てのパーツのデザインは決めておく必要があります。あまのの場合は形状もテーマも二転三転し、結局決まらずを作りながら考えました。これらの形は鍔のデザインが変わっても影響が少ないです。悩んだ末、一振り目の脇差はあまり例のない六角形の外形でモチーフは波、二振り目の打刀はありがちな八角形の外形でモチーフは花鳥風月の後半としました。

設計時の意外な落とし穴は、素人が考えるよりも鍔は小さいということです。何となく手を保護するから幅15cm位あるだろうと思ってしまいますが、実際は8cm前後しかないのです。半径じゃなく直径ですよ。なので、少し大きめの10cm四方のプラ板(厚さは刀身と同じ6mmでOK)を用意し、中心に茎穴を描きます。次に、先ほど作成した切羽の茎穴鍔の茎穴にあわせて切羽台を描きます。小柄穴笄穴をつける場合はそれらを横に描きます(差し表と差し裏間違えないように!)。小柄や笄の幅は15mm弱ありますので、これらの刀装具を実際に通すつもりなら、相応の大きさの穴になります。切羽台と合わせると結構な大きさになり、デザインの邪魔になりますので、そのあたりは鍔の外形やデザイン、刀装具の有無などとのせめぎあいとなります。脳内会議頑張りましょう

設計線が引けたら、穴をあけます。ルーターに以下のようなドリル先をセットし、穴をあけ、溝を彫ります。手を抜くと左右対称じゃなくなったり、茎を通したときに鍔が傾くので、垂直に開けてください。

そして、先端の細いビットで0.3mmくらいの溝を彫ることで、耳の部分や切羽台、小柄穴、笄穴の縁取りを行います。最後に、鍔のデザインの最終確認をして、模様を描いたら、その通りに削りだし着色します。

これで鍔の刀装具は完成です!お疲れさまでした!

参考にした/勉強になるwebサイト

あまのの未経験の作刀がどうにかこうにか達成できたのは、以下のような大変勉強になるwebサイトのおかげです。関係者の皆様に心より御礼申し上げます。

太刀 – Wikipedia

打刀 – Wikipedia

脇差 – Wikipedia

短刀 – Wikipedia

e-Gov法令検索

刀剣・日本刀の専門サイト「刀剣ワールド」 (touken-world.jp)

“刀都” 関市産の居合刀をお届け – 刀部 かたなべ 日本刀の拵と居合刀の製作・販売 (katanabe.com)

【作画資料】日本刀の種類や構造・描き方 | イラスト・マンガ描き方ナビ (clipstudio.net)

~ テント裏工房 ~ (fc2.com)

おわりに

最後までお読みいただきありがとうございました!

次はを作ります。気分は拵え師!乞うご期待!

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